- インパーマネントロスって何?
- インパーマネントロスはなぜ発生する?
- インパーマネントロスにどう対処すべき?
PancakeSwapなどのDEX(分散型取引所)で2つの仮想通貨(暗号資産)を組み合わせて預け、利息収入を得るイールドファーミングではインパーマネントロス(変動損失)が発生します。
インパーマネントロスという言葉は知っていても、その仕組み・対策を理解している人は多くありません。
そこで今回は、
- インパーマネントロスが発生する仕組み
- 実際のインパーマネントロス計算例4パターン
- インパーマネントロスを考慮した資産運用方法
をわかりやすく解説します。
この記事でインパーマネントロスへの理解は完璧。仮想通貨運用でインパーマネントロスとどう付き合っていくべきかがわかります。
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IL(Impermanent Loss) = 流動性供給をした仮想通貨の価格変動による損失
IL(Impermanent Loss)とは、イールドファーミングで流動性供給をした2つの仮想通貨の価格変動で発生する損失。
ILが出ると、流動性供給からの資金回収時に、2つの仮想通貨をそのまま持っていた場合と比べて資産が目減りします。
ILは流動性供給をした2通貨の価格差が開くほど大きくなる
↑は流動性供給をした仮想通貨の価格変化とILの関係を示したグラフ。たとえば片方の通貨の価格が4倍(+400%)に上がり、もう片方の価格は変化なしの場合、20%のILが発生します。
20%のILとは、流動性供給から資金を回収した際に、2つの通貨をそのまま持っていたときより資産が20%少ないということです。
ここから実際に数値を使ってILの発生例を検証します。
USDTとBNBの流動性供給によるIL発生の価格変動4パターン
USDT(テザー)とBNB(バイナンスコイン)という2つの仮想通貨で流動性供給をしたときのILを、4パターンの価格変動で検証します。
USDTは米ドル価格と同じになるよう設計された仮想通貨。BNBは大手取引所Binanceの通貨です。
- USDT:変動せず、BNB:価格4倍(片方そのまま、片方上がる) → IL:20%
- USDT:変動せず、BNB:価格1/4(片方そのまま、片方下がる) → IL:20%
- USDT:価格2倍、BNB:価格1/2(片方上がる、片方下がる) → IL:20%
- USDT:価格2倍、BNB:価格2倍(片方上がる、片方上がる) → IL:0%
↑の4パターンを検証するときの前提条件は計算をしやすくするため、
- 1USDT = 100円
- 1BNB = 10,000円
- 流動性供給開始時の自己資産:100USDTと1BNB
- 流動性供給開始時の預け先プール総額:900USDTと9BNB
とします。
USDT:変動せず、BNB:価格4倍(片方そのまま、片方上がる) → IL:20%
↑はIL発生の流れを表にしたもの。①で流動性供給開始時にプール全体の10%にあたる自己資産(100USDTと1BNB)をプールへ入れます。
そして②でBNBの価格が4倍に上がると、③で流動性プール内通貨の総額比が1:1になるよう調整されます。
価格が上がったBNBをプールからどんどん売り、かわりにUSDTを買います。そしてプール内が2,000USDTと5BNBになると、通貨の総額比が再び1:1になり調整完了です。
そして④で、もともと供給した全体の10%にあたる200USDT(2,000USDT × 10%)と0.5BNB(5BNB × 10%)が手元に戻ります。
⑤でIL計算をする時の価格と自己資産は、
- 1USDT = 100円
- 1BNB = 40,000円
- そのまま保有した場合の資産:100USDTと1BNB
- 流動性解除で回収した資産:200USDTと0.5BNB
です。
なのでIL額は、
(そのまま保有した場合の資産額) - (流動性解除で回収した資産額)
= (100円 × 100USDT + 40,000円 ×1BNB) - (100円 × 200USDT + 40,000円 ×0.5BNB)
= 10,000円
となります。
IL率は、
IL額 ÷ そのまま保有した場合の資産額 × 100
= 10,000円 ÷ 50,000円 × 100
= 20%
です。
流動性供給をした2つの通貨の片方価格が4倍になった場合、そのまま持っていたときより20%資産額が減ります。
USDT:変動せず、BNB:価格1/4(片方そのまま、片方下がる) → IL:20%
先ほどと逆で、②でBNB価格が1/4に落ちたときもILが20%発生します。
③で今度は価格が下がったBNBをプール内にどんどん買い入れ、かわりにUSDTを売ります。そしてプール内が500USDTと20BNBになると調整完了です。
④では全体の10%にあたる50USDT(500USDT × 10%)と2BNB(20BNB × 10%)が手元に戻ります。
⑤でILを計算すると、
- IL額:(100円 × 100USDT + 2,500円 ×1BNB) - (100円 × 50USDT + 2,500円 × 2BNB) = 2,500円
- IL率:IL額2,500円 ÷ そのまま保有した場合の資産額12,500円 × 100 = 20%
です。
流動性供給をした2つの通貨の片方価格が1/4になった場合、そのまま持っていたときより20%資産額が減ります。
USDT:価格2倍、BNB:価格1/2(片方上がる、片方下がる) → IL:20%
今度はUSDTの価格が2倍に上がり、BNBの価格が1/2に落ちたパターン。この場合も2つの通貨を合わせて4倍の価格変動なので、ILが20%発生します。
③の価格調整ではUSDTが上がってBNBが下がったので、高いUSDTを売って安いBNBを買います。そしてプール内が500USDTと20BNBになると調整完了です。
④では全体の10%にあたる50USDT(500USDT × 10%)と2BNB(20BNB × 10%)が手元に戻ります。
⑤でILを計算すると、
- IL額:(200円 × 100USDT + 5,000円 ×1BNB) - (200円 × 50USDT + 5,000円 ×2BNB) = 5,000円
- IL率:IL額5,000円 ÷ そのまま保有した場合の資産額25,000円 × 100 = 20%
です。
流動性供給をした2つの通貨の片方価格が2倍、もう片方が1/2になった場合、そのまま持っていたときより20%資産額が減ります。
USDT:価格2倍、BNB:価格2倍(片方上がる、片方上がる) → IL:0%
最後はUSDT・BNBの価格がともに2倍に上がったパターン。この場合2つの通貨の価格変動率が変わらないので、ILは発生しません。
③でプール内の通貨総額比は1:1のまま。調整が必要ないので、④で預けた100USDTと1BNBがそのまま返ってきます。
とうぜんIL額は0円、IL率は0%です。
大型銘柄の長期投資でILは気にしなくて良い2つの理由
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、時価総額が大きい仮想通貨の長期投資で流動性供給をするなら、ILはそれほど気にする必要がありません。
その理由は以下の2つです。
- 50%以内の価格変動ならILは約2%以下(流動性供給の利益の方が大きい)
- ILの原因であるプール内の調整売買はドルコスト平均法と同じ
順に解説します。
50%以内の価格変化ならIL率は約2%以下(流動性供給の利益の方が大きい)
↑は先ほども紹介した通貨価格の変化率とILの関係を表したグラフ。価格変化が±50%以内なら、ILは約2%以下にとどまります。
実際に+50%の価格変化でILを検証してみましょう。
たとえば、
- 1USDT = 100円
- 1BTC = 1,000,000円
- 自己資産:10,000USDTと1BTC
で流動性供給をし、1BTC = 1,500,000円(50%の値上がり)になったとします。
この場合、USDTとBTCをそのまま持っていれば2,500,000円になりますが、流動性解除をしたときは2,449,500円です(資産額−50,500円で、ILは約2%)。
一方PancakeSwapなどでBTC or ETHとステーブルコイン(ドルなどに価格が連動する価格変化が少ない仮想通貨)のイールドファーミングで稼げる年利は10%ほど。
時価総額が大きく価格変動が小さいBTCやETHなら、ステーブルコインとのペアで流動性供給をした方が得だとぼくは考えます。
ILの原因であるプール内の調整売買はドルコスト平均法と同じ
株取引をしたことがある人は、ドルコスト平均法という投資法を聞いたことがあると思います。
ドルコスト平均法:特定の頻度で定額分の株式を買い続ける投資方法。たとえば毎月1日に1万円分の株を買うなど。
いわゆる積立投資で、価格が高いときは少なく・安いときは多く買えるので長期的なリターンが伸びやすい。
ILの原因であるプール内の価格調整売買はドルコスト平均法と同じです。
IL発生の価格変動4パターンの最初の例でBNB価格が4倍になったとき、プールでは高くなったBNBを売り、(BNBから見ると)安くなったUSDTを買いました。
逆にBNB価格が1/4になったパターンでは、安いBNBを買い、高いUSDTを売っていますね。
流動性供給中の通貨が高騰・暴落したときに
「ILが出るから元の価格に戻るのを待とう」
と、放置する人が多いですが、実は流動性を解除した方が得です。
BNB価格が1/4の2,500円に暴落したパターン2の例で、その後価格が10,000円に戻ったとして検証してみます。
BNB価格が1/4に暴落したタイミングで流動性を解除すると、手元に50USDTと2BNBが戻ります。
一方でBNB価格がもとの10,000円に戻ったときに解除すると、手に入るのは100USDTと1BNB。
BNB価格が1万円に戻ったときの資産額を上記2つの場合で比べると
- 暴落解除:50USDT × 100円 + 2BNB × 10,000円 = 25,000円
- 暴落解除なし:100USDT × 100円 + 1BNB × 10,000円 = 20,000円
となり、暴落時に流動性を解除したほうが25%資産が増えています。
つまり流動性供給中の通貨が思った以上に高騰・暴落してILが大きくなっても、解除してもとの価格に戻れば結果的に得なのです。
ILの計算ツール
dailydefi.orgというサイトで仮想通貨AとBの現在・将来価格を入力するとILの計算ができます。
ILをシミュレーションしたいときに便利です。
筆者おすすめのビットコイン、イーサリアム運用先
「プール内の調整はドルコスト平均法と同じ」の部分で解説したように、流動性供給している通貨の高騰・暴落時は、流動性を解除してもとの価格に戻るのを待つのが得です。
元の価格に戻るまでは、レンディングやステーキングで仮想通貨を運用すればさらに利息収入を得られます。
ぼくがふだん使っているBTC、ETHの
- イールドファーミング
- ステーキング
- レンディング
におすすめサービスは以下の記事で紹介しているので、参考にしてください。
(後日公開予定)